陸上風力発電
風の力で風車を回転させることで発電する風力発電。一見シンプルに見える風車には、風を効率よくエネルギーに変換するための仕組みが詰まっています。このページでは、そんな風車の構造や規模、一般的な発電量や長所・短所など、陸上風力発電にまつわる様々な情報をご紹介します。
陸上風力発電はどんな仕組み?
風力発電に使用される風車は、①風を受ける羽の「ブレード」、②そのブレードを固定する「ハブ」、③ブレードの回転を増幅させる増速機や電気に変える発電機、制御用コンピューターなどを収めた「ナセル」、④それらを支える「タワー」から構成されています。この巨大な風車を、ナセル上の風向・風速センサーの情報を基にコンピューターでコントロールしています。
風車の大きさは、大型旅客機と同じくらい!?
ENEOSリニューアブル・エナジー株式会社が運営する、中九州大仁田山風力発電所で稼働している風車を例に、実際の風車についてもう少し詳しく見てみましょう。
まず3枚で構成されるブレードの直径は80m。大型旅客機の翼に匹敵します。
ブレードが回転する速度は一見するとゆっくり回っているように見えるかもしれませんが、実は先端部分で時速250kmを超え、新幹線並みのスピードで回転し続けています。風車全体での高さは118m。サッカーコートがすっぽりと入ってしまう大きさです。
風を逃さずエネルギーに変える「ピッチコントロール」と「ヨーコントロール」
風というのは自然環境の一部ですから、強く吹くときもあれば、弱く吹くときもあります。また、風の吹く向きもその時々で変化します。変化を伴う動力源である「風」をエネルギーに変えるために、風車はさまざまな制御を行っています。
上記の中九州大仁田山風力発電所の風車では風速4mで発電を開始(カットイン)し、13mで定格出力2,000kWに達します。12m以上の風速時には風を逃がしつつ回転数を保持。風速25m以上になると、安全面を考慮し発電を停止(カットアウト)します。
このように風速の変化に応じてブレードの角度を変え、最適な出力を維持する制御方法「ピッチコントロール」と、風車を常に風上の方角に向ける「ヨーコントロール」をすべてコンピューター制御で行い、効率よく風をエネルギーへと変換させているのです。
発電方式(いろいろな形の風車)
風車の形には、大規模風力発電所でよく見られるプロペラ型の他にも実はいろいろな種類があります。ここでは風をとらえるさまざまな形の風車を紹介します。
水平軸式
軸の向きが、地面に対して水平の風車
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- プロペラ型
- 大規模な風力発電で用いられることの多い風車です。1枚や2枚羽根のものもありますが、バランスの良い3枚羽根のものがポピュラーです。高速回転に優れる半面、カットインする風速がやや高くなります。
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- オランダ型
- 木製の羽根に布を巻いて風を受ける仕組みです。回転速度はやや遅めです。海抜の低いオランダで水を排出するための動力として発展したほか、穀類の脱穀や製粉に用いられてきました。
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- 多翼型
- 20枚前後の多くの羽根を持つ風車です。回転数は低いものの、音は静かです。アメリカ中西部で多く見られる風車で、主に揚水(水を汲み上げる)用に用いられることが多くあります。
垂直軸式
軸の向きが、地面に対して垂直の風車
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- サボニウス型
- 発明家の名前がつけられた風車です。半円筒状の2枚の羽根を互い違いに配置した構造をしています。発電効率は低いものの、弱い風でも発電でき、音も静かなため設置場所を選びません。
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- ダリウス型
- こちらも発明家の名前がつけられた風車です。弓形に曲がった2〜3枚羽根が縦に伸びた構造をしています。発電効率は低いものの、風の向きを選ばず、強風でも音が静かなため都市部での発電に適しています。
陸上風力発電の特徴
陸上風力発電に適した環境・場所
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風況が良い
一般的に年間平均風速6m/s以上が風力発電に適していると言われている
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発電所までのアクセスが良い
海外から船で港へ運ばれてきた巨大な風車のパーツは、発電所建設用地までの道のりを特殊車両を使用して慎重に運ぶため、パーツや車両が通ることのできる輸送路を確保できることが前提となる
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送電線までの距離が近い
発電した電気を送るための送電線に繋がなければならないが、距離が長いほど費用がかかる
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近隣に住宅がない
自治体によって近隣住宅までの設置距離が規定されている場合がある
陸上風力発電の発電量はどのくらい?
風力発電の発電量は、風車の大きさ(半径の2乗)、風の速さ(風速の3乗)に比例して大きくなります。
JRE宮城加美町ウインドファームの例
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- 風車
- 4,200 kW×10基
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- 年間発電量
- 約 10,150万 kWh
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- 一般家庭の年間消費電力量
- 約 23,100 世帯分相当
陸上風力発電の長所・短所
- 運転用の燃料が不要
- 風が吹いていれば夜間も発電する
- CO2排出がない
- 発電量が風速によって変わる
- 適地が限られる
- 日本では現状高コスト
陸上風力発電の豆知識
日本における風力発電の起源
1869年に当時横浜にあったアメリカ人の牧場に建てられた風車が日本で最初の風車と言われており、その後、1888年に横浜のフェリス女学院にも建設されました。この頃の風車はほとんどが揚水用でした。明治中期頃には、横浜に居住していたドイツ人が自宅で使用する電気をつくるために、母国から風車一式を取り寄せて建設したのが、日本における発電用風車の第一号とも言われています。
風車の発電量
JRE七戸十和田風力発電所などで運転する予定の約4,000kWの風車は、1回転で約4kWh発電します。2回転半で約10kWhとなり、一般家庭1日分の電力使用量になります。身の回りの家電製品で例えると、風車1回転で使用できる時間は以下に相当します。
- 電子レンジ(500W):8時間
- ドライヤー(1,000W):4時間
- 掃除機(1,000W):4時間
- ノートPC(40W):100時間