地熱発電
地球内部から生じる熱、地熱を利用して発電する「地熱発電」。火山や温泉の多い日本には豊富な地熱エネルギーが眠っていると言われています。このページでは、そんな地熱発電の種類や仕組み、一般的な発電量や長所・短所など、地熱発電にまつわる様々な情報をご紹介します。
地熱発電はどんな仕組み?
火山地帯の地下数キロメートルから数十キロメートルの深さには、約1000℃で岩がドロドロに溶けている「マグマ溜まり」と呼ばれる地帯が存在しています。この熱によって、地中に浸透した水が高温・高圧の熱水となり、地下に「地熱貯留層」が形成されます。地熱発電では、この地熱貯留層まで生産井(せいさんせい)と呼ばれる井戸を掘り、熱水や蒸気を汲み出してタービンを回すことで発電を行っています。
発電方式
地熱発電の発電方式は、「フラッシュ発電方式」と「バイナリー発電方式」の2つの発電方式が主流です。
フラッシュ発電方式
地熱貯留層から約200〜350℃の蒸気と熱水を、生産井を通して取り出し、気水分離器で分離した後、その蒸気でタービンを回して発電する方式です。気水分離器で分離された熱水は、還元井(かんげんせい)と呼ばれる井戸を通して再び地下に戻されます。日本の地熱発電所の多くがこの発電方式を採用しています。
バイナリー発電方式
フラッシュ方式が、蒸気を直接利用してタービンを回すのに対し、バイナリー方式は主に熱水を使って、水より沸点の低い媒体(例:ペンタン、沸点36℃)を沸騰させて蒸気に変え、この蒸気で発電用のタービンを回すことで発電します。使われた蒸気・熱水は還元井を通して地下に戻されます。地熱貯留層から取り出すことのできる蒸気が少なく熱水が多い場合に用いられる方式です。
地熱発電の特徴
地熱発電に適した環境・場所
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火山地帯
あるいは、周辺のマグマだまりにより形成された地熱地帯
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送電線に近い
発電した電気を送るための送電線に繋がなければならないが、距離が長いほど費用がかかる
地熱発電の長所・短所
- 国内の地下資源を活用でき、燃料費がかからない
- 化石燃料のように枯渇する心配が無く、半永久的にエネルギー供給が可能
- 発電に際して、CO2はほとんど発生しない
- 発電は、天候によらず、24時間365日安定して行うことができる
- 発電に使った高温の蒸気・熱水は、農業用ハウスや魚の養殖、地域の暖房などに再利用できる
- 火山地帯、地熱地帯にあたる地域でのみ建設可能
- 一つの発電所で発電できる容量は小さい
- 自然環境・景観への配慮や、周辺の温泉施設などとの調整が必要
- 調査開始から開業まで一般的に10年以上かかる
- 調査自体にかかる費用が膨大で、掘ってみても事業化できるとは限らない(一般的に1本数億円の調査井を複数掘る費用がかかるが、事業化できない場合がある)
- 不確実性がある(運転中の蒸気減衰リスクや追加井の掘削失敗リスク等)
地熱発電の豆知識
日本は世界第3位の地熱資源保有国!?
日本は世界有数の火山国・温泉大国ですから、地熱資源に恵まれた国と言えます。NEDO(国立研究開発法人 新エネルギー・産業技術総合開発機構) 再生可能エネルギー技術白書によれば、日本の地熱資源量は米国とインドネシアに次いで、なんと世界第3位。安定して発電ができる純国産の再生可能なエネルギーとして改めて注目されています。
一方、地熱発電に適した火山地帯、地熱地帯は国立公園などに多いため、開発に際してはその活用が制限されること、自然の景観への配慮なども求められること、また既に温泉を活用している事業者などとの調整が必要なことなど課題も多いのが実情です。さらに、地熱資源の調査から事業を始めるまでには、許認可や地域で合意を得た後で、坑井掘削調査・環境アセスメント・発電所建設などを含めて一般的に10年以上かかること、調査自体にかかる費用が膨大なのに事業化できるとは限らないことを含めて確実性の問題もあり、事業化のハードルが高いことなどが大きな課題となっています。