Q
日本の再エネは高い?

日本の再エネ価格は高い、とよく言われますが、これは2つの視点から捉える必要があると考えられます。

① 他電源との比較

資源エネルギー庁の調査によると、様々な条件を置いた試算値として2020年時点の電源別発電コスト(kWhあたり)は下記の通りとなっています。

2020年の電源別発電コスト試算結果(抜粋)

石炭火力 12.5円
LNG火力 10.7円
原子力 11.5円
太陽光(事業用) 12.9円
陸上風力 19.8円
洋上風力 30.0円

その後国際情勢の変化を受けた資源価格の高騰などもあり、化石燃料による発電コストは大きく上昇していると考えられます。一方で再エネの価格はこの後も下がり続けており、新たに電源を開発するにあたっての再エネと従来電源の価格差はほぼなくなってきていると考えられます。

なお上記の調査では、2030年時点での発電コストの見通しについても試算が行われています。太陽光や陸上風力が最も安価な電源として選ばれることが期待されます。

2030年の電源別発電コスト試算結果(抜粋)

石炭火力 13.6~22.4円
LNG火力 10.7~14.3円
原子力 11.7円~
太陽光(事業用) 8.2~11.8円
陸上風力 9.8~17.2円
洋上風力 25.9円

※金額は交付金などの政策経費を含む

出典:資源エネルギー庁ウェブサイト「資源エネルギー庁電気をつくるには、どんなコストがかかる?」

② 海外における再エネ価格との比較

海外の先進地域と比較すると日本の再エネ価格はまだ高いという指摘もあります。エネルギー白書(2020)によれば、日本における買取価格(太陽光13円/kWh、風力19円/kWh。2019年FIT価格)に対し、諸外国では10円/kWhを切る水準となっているところもあります。日本の再エネ価格が高くなる背景として、下記のような要素が指摘されています。

未成熟なマーケット

日本の再生可能エネルギー市場がまだ小さく、未成熟であることが大きな理由の一つとされています。例えば、風車を手掛ける海外メーカーからみると日本は魅力的な市場とは言えない状況が続いてきました。物流やメンテナンス拠点整備のための投資や、部品・サービス供給といった関連ビジネスの育成が遅れていたことで、コスト低減が進みにくくなっていました。国として意欲的な導入目標が示され、市場の安定拡大が見通せるようになることで、今後日本市場への投資や関連ビジネスの育成が行われ、コスト低減が進むことが期待されています。

適地の不足

日本は風況の良い場所や太陽光に適した広い平地が限られており、利用可能な土地を造成して発電設備を設置したり、発電した電気を系統につなぐため事業者が電線(自営線)を整備したりといったコストがかかることがあります。日本を囲む海を発電に活用する洋上風力発電は、このような制約に対応する方法のひとつとして期待されています。また、これまで活用が限定されていた耕作放棄地などのうち再エネに適した土地の活用促進策が議論されています。

災害への備え

台風や大雨、地震の多い日本では、海外と比較して災害対策にコストがかかっていると言われています。

その他(制度・仕組みの違い)

発電所開発に当たっての国や配電事業者、発電事業者を取り巻く制度や仕組みに違いがあるため、単純な価格比較が難しい面もあります。例えば、再エネで発電した電力を供給するために電力系統の増強が必要になった場合、日本では発電事業者が大きなコストを負担するケースがあります。